生産年齢人口の減少

日本は世界に類を見ない高齢化が進んでおり、65歳以上の人口比率はすでに28%に達しています。現在、高齢者のうち65歳から74歳までの人数と75歳以上の人数は現在ほぼ同数ですが、2025年にはこれが2対3になってしまいます。加えて労働力人口は厚生労働省の推計によれば、2030年に5,800万人まで減少してしまいます。マクロ経済でみると、労働力人口を減らさないことが肝要となります。そのためには女性、そして高齢者の労働力人口を引き上げなくてはなりません。
女性については、保育・育児サービスを充実させ、企業は子育てと仕事を両立できる体制を整備しなければなりません。OECDの調査でも女性の就業率と出生率には正の相関関係があります。女性が働きやすい社会は出生率も上がります。高齢者雇用では、生涯現役社会の創出が必要となります。2025年には男性の厚生年金の支給年齢が65歳に引き上げられます。それまでには少なくとも定年を65歳にすべきです。
外国人労働者の受け入れ拡大も必要となります。政府は、人手不足が深刻な建設や農業などの業種を対象に新たな在留資格を創設し、2025年までに単純労働者を含む50万人超の受け入れを目指しています。50万人超を受け入れれば、2017年時点で127万人だった外国人労働者は大きく増えますが、人手不足を外国人で補おうとしても、安心して暮らせる環境が伴わなければ長続きはしません。外国人労働者の暮らしやすい環境をどう整備するかが課題になってきます。
重要なのは、人事活用の質的向上を通じて生産性を上げ、働き甲斐と企業の競争力を両立させることです。女性やシニア、外国人といった多様性の確保、労働の質に関わる健康経営の視点、人工知能(AI)などの先端技術の利用による業務効率化などが必要となります。企業にとっては、デジタル革命とグローバル化の激流の中で、国際競争力を維持するための生産性向上が急務となっています。

(2018年8月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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