相続による都市部への資金移動

超低金利下で敬遠されてきた預金の位置づけが変わってきています。金利ある世界では、金融機関の稼ぎの源泉として預金の重みが増します。各行とも金利を上げて獲得に動いていますが、相続に伴う資金移動が預金の東京集中を加速させる要素となっています。60兆円規模の資金移動は、地方金融機関にとって試練となります。
地方在住の親が亡くなり、都市部に住む子どもが預金を相続する際、営業地域が限られる地域金融機関は、流出超過になりやすくなります。相続マネーの受け皿になっているのが、都市部の大手銀行です。奈良や秋田、愛媛など17県では、家計の金融資産の3割以上が県外に流出する可能性があります。東京圏の吸引力はブラックホール並みで、家計の金融資産の集中は一段と進んでいます。
銀行や信金にとって預金は、運用の元手でビジネスの基盤です。預金が減れば運用リスクを取って収益をあげにくくなり、不良債権処理や融資先への経営支援の余力は落ちてしまいます。

(2024年4月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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