私大の定員割れ増加

今世紀に入っての20年で、私大は123校、入学定員は約7万6千人に増えました。医療・看護系や国際系など時々にブームがあり、学部数は1.5倍の1,972になっています。しかし流行が去れば受験生は離れてしまいます。既に私大全体の半数が定員割れ、約3分の1が赤字です。定員割れが著しい、教育スタッフが不足、退学防止策が不十分など、文部科学省は学部や学科を新設して間もない私大に、問題を指摘して改善を求めています。その数は毎年、数十校に及んでいます。
それでも膨張が続く背景には、国の許認可政策に加え、私大特有の事情があります。授業料は在籍生の教育に使うため、新規投資資金は学部新設で賄うしかありません。しかも時代に合わなくなった学部を廃止するスクラップ・アンド・ビルドは嫌っています。教員は高度な専門家で、配置転換は困難との理由からです。
1980年代、増える18歳人口を収容するため国は大学に臨時的な入学定員増を求めました。しかし、この臨定は最終的に5割程度を恒常的定員に含めることが認められ、後の大学過剰を招きました。23区規制の緩和はその再来のようです。少子化でも進学率が上昇した時代は拡大路線が奏功しました。しかし、今後は進学率の頭打ちが予想され、ダウンサイジングが不可避です。

(2023年6月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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