結核患者の数の減少

結核は、咳やくしゃみとともに患者から排出された結核菌を吸い込むことによる空気感染で広がります。たんが絡む咳や微熱、倦怠感、食欲不振などが、2週間以上続けば結核の可能性があります。感染者の5~15%が2年以内に発病し、数十年後に症状が出る人も数%いますが、大半の人は感染しても生涯発病しません。
日本の結核患者数が減少し、1951年の統計開始以来、初めて欧米並みの低蔓延国入りを果たしました。予防対策の中心は、生後5~8か月の乳児期に接種するBCGワクチンです。この予防接種や抗菌薬の普及、保健師らによる個別の服薬指導などで、結核患者は減少しました。
感染が判明し、症状や菌の排出があれば入院治療が必要となります。かつては不治の病と恐れられ、亡国病とも呼ばれましたが、今では通常6~9か月間、複数の抗菌薬を毎日服用すれば治る人がほとんどです。無症状で菌の排出もなければ通院で済みます。感染経路は空気感染に限られるため、触れたものを特別に消毒する必要はありません。
日本と人的交流が活発な近隣諸国には患者が多い国が目立ち、世界の新規患者数の半数以上をアジアが占めています。2021年の統計によると、国内の20歳代患者のうち約4割は、入国5年以内の外国生まれの人です。日本に中長期間滞在する外国人に対し、渡航前の結核検査を求める対策の徹底や、入国後の健康観察の強化が課題となります。

国内の感染状況は、西高東低になっています。都道府県別の人口10万人あたりの患者数は、長崎が13.5人、大阪が13.3人、徳島が12.9人の順に多く、長崎は最も少ない山梨の4.3人の3.1倍に上っています。理由は解明されていませんが、離島が多く、高齢化率も高いことが関係しているとされています。医療機関にかかりにくい上、加齢で免疫力が弱まった住民が多いためと思われます。

 

(2022年9月15日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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