肺がん検診の限界

東京都杉並区の肺がん検診で、がんを見落とされた40代の女性が死亡したとの報道がありました。肺がんは日本人のがん死亡率の第1位で、死亡率も高く、早期発見、早期治療が唯一の対策となっています。しかし、日本で行われている肺がん検診は、胸部X線によるもので、早期発見には限界があります。
がん検診の目的は、がんを早期に見つけ、死者数を減らすことにあります。国全体で死亡率の減少を目指し、市区町村が公的資金で行う対策型と人間ドックなどの任意型があります。肺がんの対策型検診は、年1回、40歳以上が対象です。市区町村が地域の医療機関に委託し、胸部X線撮影で検査します。厚生労働省は、指針を定めており、2人以上の医師で画像を診断します。うち1人は肺がん治療に関わる医師か、画像診断が専門の放射線科医を含めるよう求めています。
一般の方はもちろんですが、喫煙している人、交通量の多いところで生活している人、アスベストが気になるなど肺がんを心配している方は、CTによる肺がん検診を受けたほうが良いと思います。CTによる肺がん検診は費用の点から普及していませんが、早期発見には優れた方法です。X線の診断にはかなりの経験が必要で、的確に判断できる医師は限られています。今回のような見落としは、他の医療機関でも起こりうる事例です。年1回の胸部X線だけの肺がん検診では、早期発見が遅れることがありえます。がん検診での胸部X線検査は、肺がんの予防に対する有効性がないとして、世界のほとんどの国では行われていません。今後はCTによる肺がんの個別検診が必要になるかもしれません。

(2018年7月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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