肺と肝臓の同時生体移植

京都大病院は、全身の臓器に異常が生じる重い疾患の10歳未満の男児に対し、両親と祖父から肺と肝臓の一部を同時に生体移植する手術を実施しました。肺と肝臓それぞれの生体移植や、脳死状態の提供者からの同時移植は実施されていますが、生体の同時移植は世界初です。病院によると、男児は退院し、家族ともに経過は良好としています。
男児、2歳で再生不良性貧血を発症しています。遺伝子変異による先天性角化不全症と診断されていました。4歳の時に妹から骨髄移植を受けています。その後、男児は肺の機能が悪化して酸素が取り込めなくなったほか、肝硬変も発症しました。肝臓と肺の機能が著しく低下し、臓器移植が避けられない状態になっていました。
国内の小児の脳死提供者は少なく、小児の脳死臓器提供数は、提供が可能になった2010年以降、2023年末までに100件に満たない状況です。移植を待つ期間は長期化しており、待機中に亡くなる患者も少なくありません。生体移植は、健康な提供者にも合併症のリスクが伴います。欧米と比べ、日本は生体移植の割合が高くなっています。脳死による臓器提供が増えれば、生体移植は減る可能性があり、脳死移植に対する理解を広げる体制整備が必要です。

(2024年3月5日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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