自己肯定感を高めるために

夏休み明けは子どもの自殺が多くなります。昨年は小中高生の自殺が年500人を超え、過去最多となりました。G7で、10代の死因の1位が自殺なのは日本だけです。小中高生の自殺の4割は学校や学業が原因となっています。指摘されているのが、日本人の若者の自己肯定感の低さです。内閣府の国際比較調査によれば、自分自身に満足していると答えた人は45%しかおらず、最も高い米国の87%はもとより、日本の次に低い韓国の74%と比べても極めて差が大きくなっています。
自己肯定感を高めるためには、4つのキーワードがあります。1つ目は居場所です。内閣府の子ども・若者白書によれば、居場所の数が増えるほど自己肯定感が上がっていくことが分かっています。居場所を考える時に大切なのは、量だけでなく質も追求することです。小学生の学童保育に関し、親が働けるよう量の確保を優先する風潮がありますが、子どもが行きたい場を選ぶ権利があるという視点を決して忘れてはなりません。
2つ目は余白です。今の子どもは生活に余白がなく、生き急ぐように見えます。都会では特にスケジュールに追われる子が多く、週末の習い事を含め週に7日予定がある子が少なくありません。小中学生なら週に最低1日は、親子とも何もない余白の日をつくるべきです。3つ目が伴走者です。自己肯定感は、1人で自動的に育まれるものではなく、自分を受け止めてくれる存在があってこそ高まります。4つ目が貢献感です。アフタースクールには低学年の子がいて自分が相談相手になれます。
居場所・余白・伴走者・貢献感、4つのキーワードがまさにそろうのが放課後です。小学校低学年では、学校は1,600時間、長期休みを含む放課後は日曜日を除いても年1,600時間以上あります。色々な課題が学校に集中し、多くの学校は既に手いっぱいです。好きな活動の中で、自分の長所を見い出したり、くつろいだりできる放課後が大切です。主体性や自己調整力が高まれば、学習にもプラスになります。放課後を活用して、社会全体で子どもを育てることが大切です。

(2023年7月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。