虐待に対応する人材育成

子どもの虐待に関する相談対応件数が増える中、児童相談所は若手の指導役不足に悩んでいます。児童相談所を設置する自治体のうち、児童福祉法で定める指導役の配置基準に届いていないのは約4割に上っています。児童相談所職員を急速に増やしてきた国は、2022年12月に新たな増員目標を掲げましたが、指導役の確保が追いつかない状況です。
国は、2018年4月時点で計3,252人いた児童福祉司を、2022年4月時点で計5,430人に増員しました。しかし、児童福祉司のベテランの割合は低下し、勤務経験が3年に満たない児童福祉司は、全体の約51%に上っています。児童福祉法は、児童福祉司6人あたり1人を目安に、規定の研修を終えた指導教育担当児童福祉司の配置を求めています。
虐待が疑われる現場では、子どもが自らの状況をうまく説明できない、保護者が嘘の説明をするなど難しいリスク判断を迫られます。児童福祉司の増員と児童相談所新設のタイミングが重なり、ベテラン職員の確保は難しい状況が続いています。経験者の再雇用を増やすなどして、応急的に若手職員のフォロー体制を充実させるべきです。
英国では、虐待などに対応する職員確保や人材育成の体制整備が進んでいます。1970年代から虐待死事件などをきっかけに法改正が進められ、児童相談所にあたる組織で働くソーシャルワーカーは約3万人で、日本の児童福祉司の5倍以上の水準です。全体の職員の34%が管理的立場で業務にあたっており、日本と比べて若手の指導や支援ができる環境にあります。

 

(2023年1月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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