豊胸充填剤による被害

日本美容外科学会(JSAPS)は、美容目的の豊胸でジェル状の充填剤を使った女性の間で、しこりや感染症などの合併症が相次いでいることを受け、1年以内を目標に、使用禁止などを盛り込んだ指針をつくることを決めました。充填剤は管状の器具で乳房に注入し、化学物質のポリアクリルアミドや、シリコーン、ヒアルロン酸などの素材が使われています。シリコーン製のバッグと比べ、全身麻酔が不要で傷が小さく、全国の美容クリニックで扱っています。充填剤は大胸筋を覆う筋膜と乳腺側の筋膜の間に入れます。菌が入ったり、充填剤が乳腺に入ったりすると、炎症などが起きる恐れがあります。充填剤が乳腺や大胸筋などに散らばると、全てを取り出すのは難しくなります。

豊胸目的の充填剤をめぐっては、米食品医薬局は血管を詰まらせる危険があるなどとして使用を禁じています。日本では、豊胸目的で国の承認を受けたものはありません。形成外科医である吉村陽子氏の考えを提示します。

注入剤による豊胸術の危険性について
形成外科学会専門医からなる日本美容外科学会(JSAPS)の調査で、注入による豊胸術でしこりができたり、感染を起こすなど様々な合併症が生じていることが明らかになった。もう一つの日本美容外科学会(JSAS)でも2015年の韓国美容外科学会の声明を受けて、豊胸術に用いる注入剤の危険性を周知、学会では使用を推奨しない、使用する医師は十分な説明と同意の上で使用すべきと注意喚起している。JSAPSのHPで豊胸術の項目を見ると、注入剤が生体に吸収されないものであれば、異物に対する生体反応の予測が困難であるし、ヒアルロン酸などの吸収されてしまう物質では、一定期間で注入を繰り返すことになるため、異物注入式の豊胸については否定的である。太平洋戦争後の日本で、様々な注入剤による豊胸術が極めて悲惨な結果を招いたことが、日本形成外科学会の設立につながった経緯もある。現在豊胸に承認されている材料はシリコンバッグのみであることを強調したい。

(2018年11月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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