首都圏大学における地方出身者の減少

かつては地方から東京に行き、立身出世や自己実現を図るというのがロールモデルの一つとなっていましたが、近年は首都圏の大学に通う地方出身者の割合が減っています。文部科学省の統計によれば、首都圏(1都3県)にある大学の新入生のうち、首都圏以外の高校出身者は、1973年度に50.3%を占めていましたが、2023年度は32.6%まで減少しています。
理由の一つに挙げられるのは生活費です。全国大学生活協同組合連合会の2023年の調査によれば、一人暮らしの大学生の生活費は全国平均の12万7,500円に対し、首都圏は14万3,520円でした。
地方で公立大が大幅に増えたこともあります。1989年度に39校(学生数約6万人)だった公立大は、2023年度には100校(約17万人)に増えています。少子化による経営難の私立大が公立に移行しており、自治体が運営する安心感もあって地元志向に拍車をかけています。IT化で情報格差の解消が進んだことや、新型コロナウイルス禍で受験や通学時の感染リスクへの懸念が広がったことも影響している可能性があります。
地方の学生を支えてきた県人寮にも変化がみられます。江戸時代の旧藩主や県人会などが、地元の出身者向けに設けた寄宿舎がルーツで、全国学生寮協議会によれば、最盛期の1970年頃には都心を中心に約80施設あった寮は、現在41まで半減しています。背景には建物の老朽化や利用者数の減少などがありますが、相部屋を完全個室にしたり、進学率が向上した女性の専用棟を新設したりする動きも出ています。

(2024年3月12日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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