骨髄ドナー登録の簡略化

血液のがんである白血病は、白血球など血液の細胞のもとになる造血幹細胞が正しく働かなくなります。ドナーの骨髄や赤ちゃんのへその緒から採取した健康な造血幹細胞を移植して治療します。骨髄バンクを通じた年間の移植数は約100件です。HLAという免疫の型が患者と一致する人をドナーに選ぶのが原則です。現時点では50歳前後のドナーが多く、55歳以上になると移植後の治療効果が下がるために骨髄提供ができなくなるため、今後10年以内に全体の4割にあたる23万人以上が登録から外れてしまいます。
白血病の治療を支える骨髄バンクへのドナー登録が手軽になります。日本骨髄バンクは、口内を綿棒で拭って免疫の型を調べるスワブ検査を2026年度にも本格的に導入します。従来の採血検査と異なり、自宅でできて痛みがありません。スワブ検査は、ドナーが患者の血縁者の場合で既に国内で使われているほか、海外の骨髄バンクでは主流となっています。しかし、日本では、献血事業を担う日本赤十字社がHLA型の検査を担当することもあり、導入が遅れていました。
移植数を増やすためには検査法の改善に加えて、ドナーが円滑に細胞を提供できる体制づくりが必要です。ドナーは、細胞を骨髄から採取する場合は約4日間、血液から採る末梢血幹細胞採取では5~7日間入院しなければなりません。この入院期間が移植実施の障壁になっています。ドナーの候補に選ばれた後に健康面以外の理由で提供を断念した人のうち、仕事を休めないなど都合がつかないとしたのは4割で最多です。
赤ちゃんのへその緒から採取した造血幹細胞を使う臍帯血移植も白血病治療に貢献しています。2015年度以降の移植数は骨髄バンクを通した件数を上回っています。HLA型がわずかに異なっていても移植しやすいほか、保管した細胞を必要な時にすぐ移植できます。非常時にも供給しやすく、新型コロナ流行下では、骨髄バンクのドナーからの採取が滞る場合に備えて、臍帯血をバックアップに活用していました。しかし、採取できる造血幹細胞が少なく、大柄な患者では骨髄移植が向くこともあります。

 

(2024年3月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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