高齢者うつ病と認知症との違い

高齢者のうつ病は、認知症との判別が難しく、発見や治療が遅れがちです。新型コロナウイルス感染症の流行により、交流が乏しくなることで、うつ病患者が増えています。特に、新型コロナ重症化のリスクが高いとされる65歳以上の高齢者では、警戒して外出を控えているだけに起こりやすくなっています。
高齢者のうつ病は、体の不調と心の症状が合わせて現れる場合が多くなっています。体のあちこちが痛む、めまいや立ち眩みがある、食欲が落ちたり、吐き気がしたりする、多量の汗をかくなどです。同時に、不安や苛立ちの感情が高まるなど、精神的に不安定になります。
高齢者では持病を抱えていることも多く、症状からうつ病を見つけることは難しく、認知症状と見分けることは容易ではありません。代表的な認知症であるアルツハイマー病との症状の違いが問題となります。アルツハイマー病は、症状がゆっくり目につきにくい形で進むのに対し、うつ病では、身近な人が亡くなったことなどによる喪失感や孤立をきっかけに、比較的短期間で悪化します。うつ病では、食欲不振や睡眠障害もみられます。
うつ病の治療では、置かれた環境を改善する働きかけと、症状を緩和する薬剤の処方の二つが治療の基本です。孤立感を和らげるために家族や地域の見守り、デイサービスの利用などで人との関わりを増やすことが必要となります。治療薬も進歩しています。以前のうつ病治療薬の多くは副作用が強く、高齢者に十分な量を処方できませんでしたが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などが有効です。

(2020年12月28日 岐阜新聞)
(吉村 やすのり)

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